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更新日付:2022年10月17日 地域交通・連携課

AOMORI LIFESHIFT人財インタビュー05 伊藤 宏さん

自分にできるおもてなし「人に喜んでもらえる何かをしたい」。
中学教員を定年退職後、ネイチャーガイドとして奥入瀬の魅力を伝える

伊藤氏01 奥入瀬ネイチャーガイド

つがる市(旧・木造町)生まれ。弘前大学理学部(現・理工学部)卒業後、理科教師として青森県内の中学校に勤務し、2018年十和田市立三本木中学校校長を最後に退職。退職後に、おいけん(NPO法人奥入瀬自然観光資源研究会)に入会し、奥入瀬渓流ネイチャーガイドとして、奥入瀬渓流を訪れる国内外の観光客にその魅力を伝えている。また、2022年1月から、奥入瀬渓流館内の苔テラリウム工房「ヒロじいとコケさんぽ」代表として、奥入瀬渓流をイメージした苔テラリウムのワークショップを開催している。また、友人とクラッシックギターデュオ「ea-Z’s(いー爺―ず)」を結成し、さまざまな場所で演奏会も開いている。

退職後は人に喜んでもらえる仕事をしたい-畑中宏之さんとの出会いが活動のきっかけに-

つがる市(旧・木造町)に生まれ育ちました。数学が得意だったので弘前大学の理学部に進み、就職は、地元に残ることを考え高校の物理の教員になろうとしましたが、物理での採用がなく中学の理科の教員になりました。中学の教員は物理の他に生物・地学・化学を教えますが、特に生物が好きになり、当時は授業内容を自由に作ることが出来る「選択理科」という科目があったので、キノコなど菌類の授業を行ったこともあります。いまの自分の活動を思うと、中学の教員になったことがスタートだったのかもしれません。
50代の頃、上北教育事務所に勤務していた時に、「十和田バラ焼きゼミナール」の畑中宏之さんと出会います。上北教育事務所ではさまざまな事業や研修会を主催しており、畑中さんに研修会の講師や家庭教育・PTA活動に関わるパネリストをお願いしていました。私は、畑中さんと接する中で、その熱意で周りの人たちをどんどん巻き込みながら、食を通して地域の人づくりをするという夢を実現していくパワーに惹かれました。

最後の勤務先の中学校は、修学旅行中に東京の上野公園で十和田市をアピールする活動も行うなど「おもてなし日本一」をスローガンに掲げていろいろな活動している学校でした。当時、畑中さんが企画していた日中国交正常化45周年のイベントに、生徒がボランティアとして参加することになりました。中国の瀋陽で、中国の大学生や高校生と一緒に十和田市の魅力を伝えたり、会場の清掃やごみ集めをしたり。

そういう生徒たちの姿に刺激を受け、「子どもたちが地域の魅力を伝えてくれているのだから、お客様を迎える大人がしっかりしなければいけないんじゃないか…」と、自分にできるおもてなし、つまり「人に喜んでもらえる何かをしたい」という思いにつながっていったように思います。
  • 伊藤氏02
    30代の頃勤務先の学校で

奥入瀬渓流・十和田湖はすごいところ-川村祐一さんとの出会いから現在の活動へ-

「人に喜んでもらえる何かをしたい」という思いを持っていたものの、仕事柄余裕がなく、教員時代に退職後のことを考えることはありませんでした。真剣に退職後のことを考え始めたのは退職する2年前くらいです。

まずは、音楽が好きでずっとギターをやっていたので、退職したら本格的にやろうと思っていました。偶然、昔一緒にギターをやっていた仲間が活動し続けていることを知り、二十数年ぶりに再会し、2018年、地域の人たちにほっと安らぐ時間を提供することを目的に、クラッシックギターデュオ「ea-Z’s(いー爺ーず)」を結成しました。学校の芸術鑑賞教室やレストランでのライブ演奏などを行っており、2021年には青森県立美術館のシャガールの「アレコ」が全4作品そろったホールでナイトミュージアムコンサートを行うという企画に応募し、演奏の機会を得ました。

もう一つは、今活動をしている奥入瀬渓流ネイチャーガイドというお仕事です。きっかけは、長年エコツーリズムなどの活動に携わってこられた川村祐一さんに出会ったことです。

川村さんには、中学校の理科教師の研修会で、奥入瀬渓流から十和田湖までガイドをしていただき、ヒメマス孵化場や発電所、地層の話しなどを伺い、ここはこんなにすごいところだと初めて気付き、ネイチャーガイドという面白い仕事があることを知ります。

退職して「お世話になった十和田に恩返しをしたい。自分が好きなことで誰かが喜んでくれればいいなあ」と考えていた時に、川村さんとネイチャーガイドのことを思い出します。そこで、川村さんが役員を務める「おいけん(NPO法人奥入瀬自然観光資源研究会)」の会員になり、自然観察会に参加しました。

その時は、会に入ればガイドになれると思っていましたが、実は会自体の活動にはガイドを養成するプログラムはありませんでした。道が見えてきたのは2年目です。上北地域県民局が主催する「外国語ガイド養成講座」を「おいけん」が担当しているという情報を得て自ら参加しました。その過程で「日本語のガイドもやってみないか」と川村さんに声を掛けられ、道が開けました。その年の秋からようやくガイドができるようになり、今年で3年目です。

ガイドをしている時に「苔の案内をして欲しい」と言われ、苔の育て方を勉強し始めました。奥入瀬渓流館で苔のお世話をする人が欲しいと言われ、昨年からテラリウムの管理をしています。お金を頂くのならちゃんとしたものをとの思いから、気合いを入れて勉強しました。苔も一つ一つに個性があり、知るほどに苔が好きになりました。

今年1月からは、奥入瀬渓流館内に苔テラリウム工房「ヒロじいとコケさんぽ」をオープンし、苔のテラリウムを作るワークショップを開いています。苔ブームもあって、たくさんの方がおいでになります。参加された方から、写真付きのメールが送られてきたり、以前に参加された方が近況の報告に来てくれたりとうれしいです。
  • マグ女
    青森県立美術館アレコホールで行った演奏会(2021年8月)
  • 伊藤氏04
    苔テラリウムづくりワークショップの様子

夢は持っていていい、生きがいは仕事以外にも持っていた方がいい

今の私は恵まれていると思っています。やりたいことをやって、外に出られる環境もある。「おいけん」のように受け入れてくれる団体もあります。

若い方へアドバイスがあるとすれば、「夢は持っていていい。仕事だけに人生を染めない、生きがいは仕事以外にも持っていた方がいい。自分を高められるもの、人に喜んでもらえるものを持っていた方がいい。自分を大切にして欲しい、自分のために使う時間を取っておいて欲しい」ことでしょうか。

学校に勤務しているときは、相手は「校長」として私のことを見ていたと思います。いつか、それが無くなる。肩書きは役目を終えたら無くなります。リセットするのも面白く、これまでとまったく関係のない世界は居心地がいいです。視野が広がり、人間関係が広がり、新しい世界が広がっていきます。

学校の仕事は忙しく、プレッシャーも大きかったですが、時間を作って好きなことをやる。私はギターをやっていたので、当時は仕事とは別に音楽三昧の日を作っていました。仕事を辞めても自分を高められるものを持っていたほうが面白く、付き合いが広がります。そしてどこかで巡り会い、やりたいことが出来るようになります。

ここにいると日本全国・海外から来られる方とコミュニケーションを取るのが楽しいです。教えるのではなく一緒に楽しむつもりでやっていて、お客様に満足してもらえることがうれしいです。

2、3年前は今の自分がイメージできませんでした。1年後はどうなっているか……。先のことはわかりませんが、やりたいことはふくらんでいます。そんな気持ちを持っていれば、きっとまた新しい出会いがあるかも知れません。



  • 伊藤氏05

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